「消滅!男の限界集落」サブテキスト

やる夫さんミックス「消滅!男の限界集落」を10倍楽しめる!?サブテキストをご用意しました。ミックスを聴きながら読んでみてください。

【詳細情報】
2017年に発売された、限界シリーズ第一弾となる「男の限界集落」から早3年。
シリーズ4作目を迎える今作は「消滅!男の限界集落 〜モスクワ大作戦〜」 サハリン発、シベリア経由、モスクワ行き。
最果ての地にて消滅し散ってしまうのか? .
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3年の星霜が移った。

天下は変わり和物国、限界集落の山中に庵を結んだ掘り師も、枯れ木のように老い果てた。

皿雲斎が限界集落に終の栖をさだめたのは、山頂に、誰もまだ見ぬ黒い円盤が眠る漁場があったからである。

限界集落は修掘道の偶像であったが、また、掘り師の守護神でもあったのである。

未知の円盤を掘りたいという素朴な願望が掘り師に、限界集落入りの修行をなさしめた、といえる。

皿雲斎がむすんだ庵は、掘り師が通る道筋を避けて、皿峰と円盤山との間の水越嶺の奥にあった。.
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20年ー皿雲斎は黒皿夫人の腹を割って取り出した子を育てることに専念してきた。

もとより、ただの養育では無かった。 掘り師とならしめるための苛酷な修行を強いたのである。

満三歳になるまでは自然に生い育つまでにすてておき、 その誕生の日に皿雲斎は飼い慣らしたマムシをその足指に噛みつかせてみた。

幼児は泣きもせずマムシの胴を掴んで引き離そうとした。それが叶わずと知るや、円盤を把ってひと打ちくれた。マムシが撥ねて遁れ去るや、にこっとして傷口を嘗めた。
それを眺めて皿雲斎の肚は決まったのである。
やる夫と名付けられた少年は、大きな丸い顔と小さく細い目を備えた、天性の愛嬌に恵まれた貌だちであった。

少年は、皿雲斎が強いる修行に堪えたのみならず、おどろくべき天稟をもって、ことどとく会得したのであった。

成年に達したやる夫に、皿雲斎は、もはや、教えることは、何ひとつなかった。

3日後、
やる夫は15年間生い育った限界集落を
出て行って還らぬことになった
しかし、師との別離は真に淡々としていた

炉端に黙々と座っている皿雲斎に

「では行きます」

と頭を下げると

「んん」

炉火へ視線をおとしたものの、
軽い頷きが返されただけであった
やる夫が土間へ降りて、
もう一度、今度は黙って頭を下げた

ポンっと

1枚の円盤が放られた

「持ってゆけ」

皿雲斎は何の円盤かと教えずに言った

「はい」

やる夫も聞かずに押し頂いて懐中にした
やる夫はしかし、限界集落を下り始めると別離の哀しみに堪えかねて
幾度も頭(こうべ)を回した
庵の上の巨岩に師の姿が
表れるのではなかろうかと期待したが
ついに認めることは出来なかった

やる夫は
遥かになった限界集落に向かって声一杯に

「さようなら」

と三度ばかり下げた

限界集落は
ひとりの小さな掘り人を成長させ
送り出しながら
明るくひっそりと静まっていた

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